2019年7月24日水曜日

巨人はなぜ広島に勝てないのか 昭和V9世代が野次馬的に考察する


まず最初にお断りしておきますが、僕はV9時代以来の熱狂的な巨人ファンであって、今なお「巨人が負けると飯がマズい」と本気で考えている昭和の遺物的なおっさんである。一番嫌いなのは巨人のことをわざと「読売」などと言いたがるゆとりで、あとキャッチャーのブロック禁止などという女々しいルール変更には正直吐き気を催しておる。リクエスト?なにそれ美味しいの?てなもんである。まあそういう老害の妄言・珍説の一種だと思っていただきたいのであって、あんまり真面目に読まれても困るのである。というのが今回の注意書きだ。ではいってみよう。



スピードガンのもたらした弊害について


唐突ではあるのだが、巨人云々の話の前提としてスピードガンについての老害的な苦言を呈しておきたい。最近はとにかく高校野球などでも何キロ出たとかいって大騒ぎしており、昔に比べてやたらスピード表示が出ているので、単純に野球のレベルが高くなったとか言ってV9時代を馬鹿にするゆとりが多いようである。だがちょっと待ってほしい。記録が日々進歩するのはいいとしても、たとえば百メートル走の場合は五十年で2%程度しかタイムが伸びてないのである。ましてや18.44メートルという短い距離のボール投げの話だ。十年や二十年で10%も20%も球速が増すなどということがあるかないか、常識で考えれば分かりそうなものであろう。



ではなぜスピードガンの数字ばかりが伸びるのだろうか。技術とか体格の向上で何%か速くなっていることは確かなのだが、それとは別にまず考えられるのが、数字が出やすい測り方をするノウハウが確立されたからである。特にテレビ局としては派手な数字が出た方が盛り上がるので、初速の一番速いところを狙って測っているのであり、そのあとの球の伸びとかキレに関しては全く考慮されてない。したがって、150とか160とか派手な数字ばかり出るわりには、何十年も野球を見ているおっさんとしては、それほどの速さを感じなくて首をかしげることになる。実際、山口高志や鈴木孝政、小松辰雄の球はテレビで見ていて「あんなの反則だろう!」とびっくりするところがあったが、現在160キロを出している投手を見てもそれほどのスピードを感じない。



第二番目に、投手がスピードガンと競争しているのである。本来は打者が打ちにくい球を投げるように工夫しなくてはいけないのに、その目的を忘れてひたすらスピードガンの数字が出る投げ方ばかり工夫している。その結果として、変に力を入れて投げる癖がついたために全体にコントロールが甘くなった。昔は針に糸を通すコントロールを武器とする投手がチームに一人は必ずいたものだが、そういうタイプの選手は影をひそめてしまった。さらにその結果、審判の質が低下して、きわどい球の見きわめがいいかげんになり、ストライクゾーンが極端に狭くなった。自然、ぎりぎりのコースで勝負することが難しくなって、投手ははっきりしたストライクでカウントを取ることを余儀なくされるようになったのである。ここまではあくまで前振りである(長いって)。



パリーグはセリーグに対してなぜ優位に立てるのか


毎年のセ・パ交流戦ではパリーグが圧倒的に勝ち越していて、その結果だけを見てパリーグの方がレベルが高いと決めつけるゆとりが多いようである。だが昭和のおっさんの見解は別にありまして、これはセ・パの野球の違いから来た結果であって、実はセ・リーグの方がレベルの高い野球をやっているせいなのである。セ・パの違いは何かと言えば、もちろん指名打者制のあるなしである。セリーグは投手が打席に入るので、そこでバントをすることが最初から決まっている。つまり、9番に回る前に無死か一死で一・二塁の形を作ることを目標としている。そのために早打ちを嫌って、待球作戦に出て四球を狙うことが最上の作戦とされる。つまり徹底した駆け引き野球だな。


一方のパリーグ側には待球という考えがそもそもないので、早いカウントから甘い球は振り回してくる傾向にある。セリーグの投手としては、カウントを整えてからウイニングショットで勝負が定石と考えているのだが、そこまで行く前に、本来は見送るはずの甘いカウント球をことごとく狙い打ちにされて面食らっている、というのが実情なのである。つまり、セリーグは詰め将棋みたいな細かい野球をやろうとしているのだが、何も考えてないパリーグ球団に無茶振りされて、勝負以前の段階で打たれているのだ。



もともと人気面で劣るパリーグが、少しでも盛り上げようとして導入したのが指名打者制であり二シーズン制であった。かつては遺恨試合(馴れ合いだったらしいが)の乱闘も名物だったよね。目指すところはお祭り野球であり、結果的に「打ちゃいいんでしょ、勝ちゃいいんでしょ」という大味な野球が大きな特色となったのである。その伝統が今も続いているのであり、ドラフトの際にもパワーのある投手や無茶振りする野手を指名する傾向にあるようで、そのことがさらに大味野球に拍車をかけているのだ。



打倒広島の秘策とは


結論から言うと、広島の野球はパリーグ野球のコピーである。前述したようにセリーグ伝統の野球は細かい駆け引き野球であり、その老舗であり最も洗練されたチームは巨人と言うことができる。広島は衣笠・山本浩二の主砲は別として、高橋慶・山崎・正田といった巧打者を並べて守りの野球で巨人に対抗するのがチームカラーであった。そして、老舗の巨人に一歩及ばないという状態が数十年続いたわけである。おそらくは、交流戦でパリーグと戦いっているうちにチーム構成の転換を思いついたのであろう。とにかく無茶振りするムラッ気のあるタイプの選手をずらっと並べて、カウントに関係なく甘い球は打つ、きわどい球は見送るという、大味なパリーグ野球をやりはじめた。あくまで細かい守りの野球をやろうとする巨人や阪神に対して、これが面白いようにはまったのである。


こういうチームは以前にも存在した。例えば昭和57年の中日であり、最たる例が昭和60年に日本一になった阪神であろう。しかし、広島のすごいところは、下位打線に至るまで全員が甘い球を振り回す方針を貫いているところだ。まさに「打ちゃいいんでしょ、勝ちゃいいんでしょ」の往年のパリーグ野球であり、その上で比較的投手力が安定していたので、結果としてバランスのいいチームに仕上がって三連覇を達成した。これは本来の広島のチームカラーではないし、セリーグ野球としては邪道であると僕は勝手に思っている。本来ならばお約束として、礼儀として見送るはずのカウント球を無茶振りしてくるのだから、これはあまり品のいい野球ではない。ただ、それで洗練を目指す巨人野球に勝っているのもまた事実なのである。



巨人投手陣は長打を打たれまいとして外角低目を狙うのだが、前述のように全体にコントロールが甘いし審判の質も低いため、ことごとくボールと判定される。仕方なく真ん中でストライクを取りに行くと狙い打ちされる、という同じパターンで何年も続けてやられており、昨年までの首脳陣はそれを捕手に責任転嫁していたのだからお話にならない。問題はリードや配球ではなくて、甘い球は打つ、きわどい球は見送るという単純きわまる広島打線の方針にある。次の試合では打たれまいとしてさらに外角攻めを徹底するので、結果的にますますカウントが苦しくなり、ストライクを取りに行って狙い打ちされる、という悪循環にはまっているのだ。

対策としては、徹底した外角低目狙いよりも、菅野・山口・マシソンといったスピードのある投手はインハイを軸にして球威で押し込むのが正解。速い球もなければ低目のコントロールもなく、ピンチになると真ん中でストライクを取りに行く癖のあるリリーフ陣が広島戦で炎上するのは当然の結果である。それでも去年に比べれば僅差の試合になっているのは、巨人打線が上がってきた成果と言えるのだが。



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